アンドレア・バッティストーニ氏 インタビュー

2018年11月 新宿文化センターにて

2019年1月19日(土)に新宿文化センターで開催されるフレッシュ名曲コンサート、マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」の指揮者、アンドレア・バッティストーニ氏よりお話しを伺いました。

 新宿文化センターは、来年40周年をむかえます。この機会に「千人の交響曲」を演奏することについて、どう思われますか?

 今回のマーラーの千人の交響曲は、お祝いの行事に本当にふさわしい、素晴らしい作品だと思っています。そしてまた同時にチャレンジングな曲でもあって、特に子供たちのコーラスは挑戦だと思っています。
今回オファーをいただいて、マーラーの曲に非常に興味があったので、喜んで受けさせてもらいました。マーラー本人も、この曲は自分の交響曲の中で最高の作品であると言っておりますので、私も非常に嬉しいです。

 マエストロに新宿文化センターで指揮していただくのは今年で三年目ですが、(2016年ヴェルディのレクイエム、2017年カルミナ・ブラーナ)、新宿区民の合唱団の印象をお聞かせください。

 またご一緒できて大変嬉しいです。この合唱団からは、みなさんの熱意や情熱がものすごく伝わってきます。2年間で性格の異なる、しかしいずれも困難な作品をやってきましたが、私も一緒に勉強させていただいたと感じています。
 アマチュアのコーラスですので、プロによる完璧なテクニックとは違うのですが、むしろ、作品への思いが心の底から湧きあがり、非常に感動的で、ある意味プロだと出来ないような音楽の表現への願いであるとか、自分のすべてをそこにかけるという思いは、プロの合唱団を上回ると思います。お客様にもそういった雰囲気や色彩を届けることができ、音楽として非常な成功をおさめることができました。

 去年のカルミナ・ブラーナを演奏した時に、初めて新宿区の子ども達と共演していただいたわけですが、音楽が子どもに与える影響や、子ども達があのような経験ができたことを、マエストロはどのように考えていらっしゃいますか?

 私も若い時にこういう経験があったらよかったな、と思いました。イタリアでは教会で歌うことはありますが、ふつうの子ども達がオーケストラと歌ったり、大曲を歌うことはありません。若い人にとって、こういう経験は精神を高揚させるとても素晴らしいことなので、学校でも非常に大事なことだと思います。この点については、イタリアは日本から学ばなければならないと思っています。
 子ども達には、歌うことが楽しいなあと思ってもらうことが大切です。私も子ども達が歌っているのを見ると嬉しくなります。また、私たちはこういう形で種を植えて、そうしてその種が子ども達の人生の中で花開いていくことを望んでいます。アマチュアであっても人生に音楽があるということは人生を豊かにするので、音楽に関わった皆さんがそうなることを願っています。

 この作品の素晴らしさや、ぜひここを聞いて欲しい、というところを教えてください。

 この作品はとても巨大です。人類史上最も大きな交響曲で、特異な雰囲気を持っています。とても折衷的な部分があると思うのですが、それはやはり二つの違う言語での歌詞を使っているというところが大きいと思います。
 前半は、テクニック的に良くコントロールされています。内容的には非常に宗教的なものです。オラトリオのような、宗教的カンタータのような。そこには、神としてのミューズに対するオマージュと、芸術を作り出す創造力に対するオマージュとの両方の意味があると思うのです。ラテン語のカトリックのテキストを使用していて、複雑に思えるかもしれませんが、実は内容はとてもシンプルです。
一方後半は、すごくモダンなテイストで、偉大なる文豪ゲーテの最高傑作「ファウスト」の最後の部分が使われています。ここは、声楽と器楽などあらゆるジャンルの融合、ある意味ベートーヴェンの「第九」に近いものがあると思います。マーラーは偉大の指揮者でもあり、歌劇場における素晴らしいオペラの解釈者でしたが、オペラは作曲しませんでした。この作品には、マーラー自身の、オペラや、歌曲や、オーケストラ付き声楽作品に対する想いや愛着というのを非常に強く感じます。それによって魔法のような瞬間が何回もこの作品に出てきます。前半はテクニックによってしっかりと書かれていますが、後半はもっと色彩や雰囲気を大切にしているイメージですね。シューマンも「ゲーテのファウストからの情景」を同じテキストから作曲していますが、マーラーのこの作品は本当に、どのセクションも素晴らしく熱狂的に書かれていると思います。
 そして、この作品は指揮者の私にとって、とてもチャレンジングです。作品のなかにあるまったく異なった雰囲気やそこにあるインスピレーションを、どのように聴衆に伝えるか。それらを統一的に聴衆に届けられるか。本当に私にとってチャレンジになります。

 この新宿文化センターは1979年に開館し、40年にわたり著名な音楽家が文化センターで演奏してくれました。その系譜にマエストロが加わっていただいたことを、光栄に思っています。

 ありがとう。私も光栄に思います。

2018_MAHLERのサムネイル
新宿文化センター開館40周年記念事業
フレッシュ名曲コンサート
マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」



日時:2019年1月19日(土) 17:00開演
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